『国有林』の民間企業への “長期経営権” 譲渡について【国有林についてもわかりやすく説明】

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あなたは知っていましたか。

 

現在日本の土地の2割を占める『国有林』の経営権が民間に譲渡されることになったことについて。

2017年の法改正による公益サービス改革で、国有林に関しても民間競争買い入れが実施されることになりました。

簡単に言うと、国有林の運営を場所ごとに、経営権を勝ち取った企業に任せるよということです。

 

2018年現在、1年ものの短期の契約があるのですが、これを長期でやらないか2019年に議論されます。

論点は、

今の状態のまま民間に委託するにしても1年ものの契約にするのか、それとも30年、40年の長期で契約を結ぶのを認めるようになるのか。

です。

国有林の経営権が長期で民間に譲渡されると私たちにとってどのような影響があるのでしょうか。

それは良いことなのでしょうか。悪いことなのでしょうか。

一緒に考えていきましょう。

現在の国有林の経営・国有林とはそもそも何か?

 

まずはじめに、2018現在の国有林の経営がどのようになっているのか紹介いたします。

国有林事業は、正確には『国有林野事業』と呼ばれ、政府と言っても特に農林水産省の外局である林野庁が主体となって管理しています。

国有林は日本の国土の2割、別の言い方をすると日本の国土の7割の面積を占める森林のうちの3割が国有林にあたります。

広大な土地面積です。

国有林野は様々な日本の野生生物のすみかとなっており、生物多様性の保全、地球温暖化防止機能、水源涵養機能、山地災害防止、また優れた景観や森林浴などの多面的効果、木材供給などの森林の持つ様々な効果から、国民共通の財産として考えられています。

※水源涵養についてはこちらの記事でわかりやすく紹介しています。

日本の森林整備の動向をわかりやすく解説【林業基本法/水源林造成/分収林/齢級】
今回は少しバラバラな内容が混在しますが、日本の昭和〜平成にかけての森林整備の動向について ・法律 ・植林面積 ・樹種 ・事業 の面からわかりやすくまとめます。 分収林特別措置法,水源林造成事業,林業基本法,分収林 などのキーワードが登場します。

 

 

国有林=国民の財産 なので、現在国有林の管理は税金でまかなわれ、公務員がこれを管理しています。

 

森林の難しいところは、会社に投資するのとは違って事業家がお金を投資してもさらなる金銭的リターンとなって帰ってくることはありません。

環境が良くなるだけです。

 

なので、森林を整備することが一般のビジネスにはなりづらいのです。

一般の市場の中に組み込まれづらいが、国民の健全な生活のためにはなくてはならないものなので、公務員が税金を使って管理しています。

 

そして、管理とは、具体的に植栽から枝打ちや間伐などの保育作業や伐採、搬出、運搬などの作業です。

 

林野庁は日本全国に存在する国有林野に対して、7個の森林管理局、98個の森林管理部署を設置して管理に当たっています。

 

林野庁による国有林野の管理・整備は、5つの目的を持って行われています。

 

温暖化対策治山事業(荒廃した森林の修復)、木の病気や獣害への対策(日本はオオカミが絶滅したので、代わりに人間がシカ・イノシシを殺さなくてはなりません)、生物多様性保全木材供給などです。

 

また、問題点としては海外から木材を輸入するようになったら、海外の木材は安くて、日本の木材が売れなくなりました。

売れなくなると、木を切って木材として販売することも減るので、ますます国有林を運営しても儲かることが少なくなります。

 

 

 

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国有林の経営権移譲とは、具体的にどういうこと?

 

話を戻すと、現在の国有林の経営者は政府(林野庁)です。

 

そして、税金をいくら投入しても国有林管理は市場経済の仕組みにほとんど入っていないので、お金を消費するだけという問題があります。

現在、日本は国債の大量発行のため、大幅な借金を抱えていて財政破綻しそうな状態なので、基本的にはお金をこれ以上消耗したくないです。

そこで、民間企業を先ほど述べた国有林整備の事業担当として導入することで、民間の創意工夫の力を取り入れ、より林野庁の仕事をスリム化できないか。としたのが国有林経営の民間開放問題の発端です。

国有林の整備を外注すると、民間企業にも仕事が増えます。

 

国有林を民間が長期運営するメリット

 

1、民間企業に仕事が増える、経済が回る

民間の仕事が増えると、そこで働いている人たちの給料が増える→少し裕福になる→散財も増える→経済が回る。

 

といった仕組みで経済効果が期待できます。

 

2、新しいアイデアの導入

公務員で決められた仕事を続けるよりも、民間企業間で競争し、勝ち取った仕事の枠で他の企業に負けないように仕事をするわけですから金銭的な無駄が減り、創意工夫の結果経営の効率化が期待できます。

また、民間のアイデアで、輸入材に対抗できる安さの国産材を供給できるかもしれません。

 

3、林野庁のスリム化

林野庁を始めとする公務員の仕事は外注化した分減ります。

(メリットかデメリットかは人次第ですね。)

 

 

4、より大掛かりな事業が可能になる

長期契約になることで、長期的目線で収益を上げることを見越し、機械などの設備に対して投資を行うことが可能になります。

その結果、伐採した木材のブランド製品化を視野に入れるなど、大規模なビジネスも可能になります。

 

国有林を民間が長期運営ことによって発生する懸念

 

1、森林の持つ多面的機能の過小評価

 

民間企業は儲けを出してなんぼのところがあるので、政府組織から仕事を委託されてからの業務をコンパクトにしすぎると、森林の管理の質が犠牲になる可能性があります。

木材の売買の観点からはとても効率的だと言える管理をしていても、例えばそれが森林の皆伐であったら生物多様性保全の観点や、土砂災害防止機能の観点からは問題になります。

皆伐とは森林において決めた範囲まるまる全部を切ってしまうことです。

択伐と違ってその部分全部がハゲになってしまうので、そこに住んでいた生物は住処を失ってしまいます。

また、木がなくなってしまうので、土砂を抑えていた根がなくなり、土砂災害も発生しやすくなります。

 

林野庁は森林の持つ多面的機能を重視しますが、一般企業が経営権を得た時、お金にならない多面的機能を重視するのかはわかりません。

 

2、経営失敗時のリスクも倍増

長期民間が経営することにより、林野庁とは違う視点で管理して失敗しても今の仕組みだと1年分のロスで済みますが、長期契約制度を導入すると今度は30年契約なら30年レベルでのダメージになります。

30年レベルで山地保全を過小評価すれば、台風などをきっかけに土砂災害が発生し、地元住民が死ぬ事件が起こる可能性があります。

公害のようですね。

また、長期契約になることで、伐採した木材の製品化を視野に入れた大掛かりなビジネスも可能になりますが、こちらも失敗した時の損失は1年契約の時とは比較になりません。

 

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おわりに

 

いかがだったでしょうか。

 

答えはありませんが、あなたは国有林の経営権を長期で民間に譲渡することに賛成でしょうか。それとも反対でしょうか。

 

ぜひ下のコメント欄で意見を聞かせてください。

 

そしてこの話題は今ホットなので、きっと今後テレビのニュースなどで流れることでしょう。

今の状態のまま民間に委託するにしても1年ものの契約にするのか、それとも30年、40年の長期で契約を結ぶのを認めるようになるのか。

政府の選択がどうなるのか、非常に楽しみです。

 

参考
林野庁HP

 

P.S ちょっと前(H22-23)の国有林管理の動向についてはこちらの記事で紹介しています。
関連しているので、国有林野についてもっと知りたい方は覗いてみましょう。

平成22-23の国有林野事業の見直し【ちょっと前の国有林管理の動向】
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