【シベリア】タイガの針葉樹林と森林火災問題をわかりやすく解説

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ソリンド

今回はシベリアタイガの針葉樹林と森林火災問題の現状をわかりやすく解説します。

 

あなたは森林が大気中の二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に一役買っていることを知っていますか?

 

実際に、樹木の持つ炭素固定能力により大気中の二酸化炭素濃度は一定に抑えられています。

 

ところが世の中には、「例外」が存在するのもまた事実です。

 

北極近くのシベリアのタイガでは針葉樹林が広がっていますが、ここでは近年異常が発生しています。

 

本来「二酸化炭素を吸収する場所」であるはずのシベリアの針葉樹林が森林火災によって「二酸化炭素を提供する場」になってしまっているからです。

 

シベリアの針葉樹林が二酸化炭素を提供する場になった理由

 

 

なぜこのようなことが起こってしまっているのでしょうか。

 

早速ネタバレをすると「近年火災が増えているから」です。

 

本来森林火災は適度に土壌表層の落葉を焼き払うことでシベリアの針葉樹が地表からより深く根を伸ばすことに貢献しているのですが、 度を越した森林火災により樹木そのものがなくなったり、地表の落葉が必要以上に消失したりしています。

 

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シベリアの永久凍土と針葉樹林の関係

 

タイガの地下部には「永久凍土が存在」していて、「永久凍土の上の森林が氷と外気の緩衝材の役割を果たすこと」によって永久凍土を維持しつつ、夏季には針葉樹が一部溶けた永久凍土から水分を吸収することができます。

 

なお、その針葉樹と永久凍土の相互関係なしにはシベリアには森林が成立し得なかったようで、北海道大学低温科学研究所名誉教授の福田正己教授によると「広大な砂漠になる」とのことです。

 

そして、過剰に針葉樹が消失するとそれまで針葉樹が担っていた緩衝機能が損なわれ、永久凍土が溶け出すことになります。

 

針葉樹林の林床に発生する下層植生が永久凍土と地表の「仕切り」のような機能を果たしているのですが、針葉樹が消失すると臨床の下層植生も無くなってしまうため、永久凍土を覆い隠す植物(断熱材)なくなってしまうのです。

 

この段階になるともはや我々人間の手で元々あった永久凍土と針葉樹を取り戻すことは困難です。

 

永久凍土が溶け出すと、土壌中の温度が上昇しメタンガスが発生します。

メタンガスが発生すると温室効果ガスとしても知られる温暖化効果だけでなく「火災の広がりを促進する効果」を発揮してしまいます。

 

結果として、針葉樹が火災によって消失すると、メタンガスの働きにより次に起きた火災の広がりを促進するという「負の相乗効果」が起こってしまいます。

 

火災により針葉樹という形で固定されていた炭素も土壌中の落葉として固定されていた炭素も二酸化炭素として大気中に溶け出し、さらに二酸化炭素の20倍の温室効果を持つというメタンを大気中に逃がしてしまいます。

 

シベリアの森林火災によって引き起こされる温暖化問題は深刻で、この悪循環の進行により現在シベリアの森林には「サーモカルスト」と呼ばれる「沼地」が出現しています。

 

 永久凍土になぜ沼地が出現するのでしょうか。

 

この沼地の水の出所は、二酸化炭素やメタンガス濃度の変化により気温が高められ、永久凍土が融け出した水に由来しています。

 

シベリアの森林では沼地に生えるマングローブのような樹木は存在しないので、沼地が一度発生してしまうともはやこの場所から針葉樹が生えることはできなくなります。

 

沼地の発生は立派な環境破壊です。

 

▼タイガ地域に分布する「サーモカルスト」(沼)

出典:「先端研究拠点事業『シベリアタイガ永久凍土地帯における環境変動の兆候の広域評価』の紹介」 

 

 

この画像を見ていただくと分かりますが、タイガ地域の沼地発生問題は深刻ですよね。

 

このように、一度沼地に生態系が変わってしまうと、もう元の針葉樹林に戻せないのです。

 

 

また、森林火災の発生原因は「落葉などの自然由来の発生」と「人間活動に由来するもの」があり、驚くべきこと2003年には前者が2割で後者が8割と言われています。

数値で示す被害の現状

 

シベリアでは多い年では森林火災によって2,000万ヘクタールが消失すると言われ、日本の国土面積が3,780万ヘクタールなので、計算するとおよそ日本の国土の半分近くがわずか1年でなくなることになります。

 

また、数値的な恐ろしさの参考としては

1ヘクタールのシベリアタイガが燃えると、放出される炭素量に換算すると約40トンにもなります。ところが、周囲の森林が1年かけて吸収できる量は1ヘクタールあたりわずか0.4トン。したがって燃えた面積の100倍の広さの森林がなければ、放出されたCO2は取り返せない

引用:「シベリア森林火災の発見-運航乗務員の協力

とのこと。

 

「燃えた面積の100倍の面積がなければ取り戻せない」とは、すなわちシベリアの森林火災によって起こる大気中の二酸化炭素量増加分を収支的に埋め合わせることはできないことを意味しています。

 

なぜなら多い年とはいえ1年あたりで日本の国土50個分もどこかに新しく森林を作らないといけないでして、シベリアのタイガ地域は日本の国土のおよそ20倍の面積なので、この50倍という数字を埋め合わせることがいかに難しいかが分かりますよね。

 

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現在行われている対策

 

シベリアのタイガ地域は先ほど述べたように日本の国土の20倍ほどの広さがあるため、人力でこのどこまで続くかもわからない広大な土地の森林火災の検出はできません。

 

そこで現在はNASAで打ち上げた人工衛星によってタイガ地域の火災検出が行われています。

 

とはいえ、現行の人工衛星の技術だとまだ細かい部分が測定できないようで、このような検出不可能域は2006年以降「航空機を使った目測」で監視されています。

 

▼JALによるツンドラの森林火災パトロールの実施時期と通報件数

出典:「シベリア森林火災の発見-運航乗務員の協力

 

引用したこの図を見ると分かるのですが、わずか3ヶ月の期間に100件以上も火災が発生していることがあります。

すなわち、1日平均3回ほど火災が発生していることになります。

 

JALのパイロットのパトロールによって森林火災が早期に検出され、タイガ地域の針葉樹保護に繋がっています。

 

▼挿入3:シベリアにおける航空機での森林火災の検出の様子

出典:「Concern over raging wildfires as smoke from Siberia crosses Alaska and Canada, reaching New England

 

これは、航空機でパトロールを行う現地職員が撮影した画像です。

 

爆弾が投下されたかのように煙が立ち込めていますね。

 

■参考資料

・「シベリアのタイガでは下層植生が森林の炭素循環を左右する」 梶本卓也ら 森林総合研究所 平成22年度(2010年) 研究成果選集

・「Concern over raging wildfires as smoke from Siberia crosses Alaska and Canada, reaching New England」 Siberian times reporter (2018年7月13) 

・「先端研究拠点事業『シベリアタイガ永久凍土地帯における環境変動の兆候の広域評価』の紹介」 波多野隆介(2005年)

・「凍った森がとけるとき」 重廣道子 (2003年10月) 

・「加速したらとまらない?永久凍土融解と温暖化の悪循環」 ロシアタイガプログラム

・「シベリア森林火災の発見-運航乗務員の協力」JAL (2016年以降)