(ガットの選択基準が多すぎて困っている人)
テニスのガットって、ナイロンとかポリとか、ナチュラルとかあるし、しかもゲージの太さだったり、硬さだったり、テンション維持だったり選ぶにあたって何を考えたらいいか分からない、、、。誰かまとめて。
今回はこんな疑問に答えます。
テニスはボクシングや空手のように直接相手と殴り合うことはないですが、ボールをラケットを使って間接的に攻撃しあいます。
間接的なスポーツでラケットを使うので、わりと道具の影響を受けやすいです。
そして、多くの人は道具と聞いてラケットの違いを想像するのですが、「ラケット=50:ストリングス=50」といわれるほど意外とストリングスの違いも重要です。
※ストリングス=ガット
しかし、現状ラケットこそ真剣に考えるけれどストリングスに関しては適当に決める人が多く、、、。
もうすでにお店にいてガットを選ぶ時間がないならば、前回僕が書いた「【絶対失敗しない】素材別テニスガットおすすめ5選【迷ったらコレ】」を参考にすれば失敗しないと思うのですが、とはいえ体系的なガットの選択基準についてもまとめておくと世の中のテニスプレーヤーの役に立つと確信しているので、今回はテニスのガットの選び方の判断基準について丁寧に解説していきます。
この記事を閲覧することで、
▪︎ガットの素材の違い
▪︎ゲージ(太さ)の違い
▪︎テンションの違い
がどのように作用するのかを知ることができます。
この記事の信頼性担保
なお、この記事の信頼性の担保として言っておくと、僕はテニスを高校・大学と体育会系でプレーした20代男性で、JOP参戦者や国内プロとは面識のある人もいて、テニスのガットに関しては自分自身30種類ほど試したことがあります。わりと周囲からもギアについては話をよく聞ける環境でした。
あと、これは余談ですが、テニスオタクなので、フェデラーが日本に来た時には実際に見に言ってしまったこともあります。
それでは、ガットの判断基準について深掘りしていきます。
ガットの種類にはどんなものがあるの?【ナイロン、ポリ…】
基本的には「ナイロン」、「ポリエステル」、「ナチュラル」の3種類があると考えてくださればOKですが、厳密にはナイロンにも「モノフィラメント」と「マルチフィラメント」があり、さらには縦糸と横糸を変更する「ハイブリット」なる張り方すらあって、ガットの素材にも多様性があります。
【値段よし打感良し】ナイロンストリングス
ナイロンストリングスの得失は次のようです。
▪︎値段が安価
▪︎打感がポリよりも良い
▪︎スイングスピードが遅くても大丈夫
▪︎やわらかいので身体への負担が少ない
▪︎それなりにテンション維持する
●ナイロンの弱み
▪︎同じ運動エネルギーではポリほどのパワーを生み出せない
▪︎雨で変質する
▪︎ポリほどのスピンやパワーはなく、自然な感じ
●張り替え基準
▪︎頻度にもよるが、3ヶ月以内で張り替えたい
ナイロンの特徴は上記の通りですが、ナイロンストリングスは大きく分けて2つ、「モノフィラメント」と「マルチフィラメント」に分けられます。
違いは名前の通りでして、
▪︎mono filament(モノフィラメント):太い一本のナイロン糸を軸にしている断面
▪︎multi filament(マルチフィラメント):細い無数のナイロン糸を軸にしている断面
となっております。
主流は「モノフィラメント」で、マルチよりも安いです。
ナイロンはポリよりもパワーやスピンはかからないですが、とはいえ速いスイングスピードが要求されないので、体への負担が小さく、一般に非力な女性やテニス初心者でも扱いやすいです。
モノとマルチを比較しつつ、ナイロンの性質についてより深掘りしていきましょう。
【ナイロンの中でもコスパ重視】モノフィラメント
モノフィラメントは断面としては太い一本のナイロン糸を軸としているので、マルチに比べて構造が簡単であり、そのため値段も安いです。
しかし、ストリング断面中の糸と糸との間の表面積が少ないので、耐久性がマルチより高いです。
これはイコールストリングのテンション維持が良いことにもつながる(※)ので、あまりガットの打感にこだわりがないプレーヤーにおすすめです。
※ナイロンの場合、繊維数が増えるほど一本一本が伸びやすくなりテンション維持は悪くなる
▪︎モノの例:「AK PRO16」
「海島型」というモノフィラメントの「モノ」の部分が3等分されていて少しマルチっぽくもなっていますが、基本的にはモノの分類でしょう。
値段に対しての打感と耐久性のコスパが良いです。
【ナイロンの中でも打感重視】マルチフィラメント
マルチフィラメントは、よりナイロンの打感をナチュラルに近づけようと意識し、多数のナイロン糸を並列させて作ったストリングです。
糸数が多いので、どうしても耐久性やテンション維持性能がモノよりも悪くなってしまう(※)ので、より打感を追求するプレーヤーや身体への負担を最小限にしたい方におすすめです。
※とはいえポリよりははるかにテンション維持は良い
逆に糸数が多くて断面中の表面積が大きい分衝撃が拡散され、比較すると少し身体への負担が小さかったりします。
▪︎代表例:「テクニファイバー X-ONE」
ナチュラルを目指したマルチストリングスでナイロンの中でも特に打感がいいです。
ネットで買って店舗持ち込みしたとしてもたぶん元を取れるくらいネットは安いので、自分へのご褒美にどうぞ。
【圧倒的なパワー】ポリエステルストリングス
ポリエステルはスポーツウェアの素材にもなっており、基本的に耐久性がナイロンよりも高いです。
そして、機械で大量生産できるので値段もナチュラルよりも安価で、かつ構造としては一本だけの糸(糸というかプラスティックみたいなイメージ)なので、かなり丈夫です。
しかし、ポリエステルは素材の性質上加工しやすく伸びやすいので、テンション維持は最悪です。
良くて2週間、大半は3日くらいしかベストな状態を保てず、圧倒的な反発力を生み出す反面、パフォーマンス発揮時間は短いです。
そんなポリエステルストリングスに得失についてまとめてみましょう。
●ポリの強み
▪︎値段が安価
▪︎強い反発力を保つため、スピンとパワーはナイロンよりも大きい
▪︎雨に濡れてもほぼ気にしなくて良い
●ポリの弱み
▪︎打感がナイロンよりも硬く、身体への負担が大きい
▪︎速いスイングスピードが要求される
▪︎ポリエステル自体が伸びやすいので、テンション維持性能が低い
●張り替え基準
▪︎頻度にもよるが、長くても1ヶ月以内では張り替えたい
上記の通りで、ポリの特徴は、打感や負担は大きいけれど「パワー!」「スピン!」を重視したいプレーヤー向け。
基本的に使用が想定されるプレイヤーは、自力でガットを切る力のある方で、ポリを張っても1ヶ月以内に切れるくらいはラケットを振れる人が対象です。
▪︎ポリの例:「プロハリケーンツアー」
ちょっと打感硬いかもですが、ハードヒッターでもすぐには切れない耐久性と優れたスピン性能を持ちます。
【ゴッドフィーリング】ナチュラルガット
ナチュラルは、羊の腸という天然素材を加工して作られるので、工業的に生産コストがかさみ、値段も高価です。
一張りお店で8,000円、ネットでも5,000円くらいしてしまうので、基本的には張れるのはスポンサーがついているプロか経済的に余裕がある人か、という感じです。
とはいえ、天然素材な分圧倒的なフィーリングと反発力を持ちます。
特徴をまとめると以下のようになります。
●ナチュラルの強み
▪︎極上のフィーリング、反発力(=パワーもある)
▪︎ポリほど速いスイングスピードを要求されない
▪︎テンション維持性能が高い
●ナチュラルの弱み
▪︎値段が高価
▪︎身体への負担が小さい
▪︎雨に劇弱。というか溶ける。
●張り替え基準
▪︎頻度にもよるが、4〜5ヶ月以内では張り替えたい
上記の通りです。
基本的に雨に弱く、もはや部屋の湿気すら気をつけたほうがいいとさえ言われます。
しかし、天然素材の強みか反発力が高いのに衝撃吸収力も高く、テンション維持も優れています。
ガンガンとストリングを切ってしまう若い男性プレーヤーだとお財布を痛めつけるのでおすすめしないですが、中年以上の層にはナチュラルの魅力を楽しむ余裕がありそうですね。
【ポリとナイロンのいいとこ取り】ハイブリット
「ハイブリット」とは、ストリングの縦と横で違うガットを張ることです。
「ハイブリットはただのカッコつけ、意識高いだけ」のように批判するハイブリットを試さずに否定している人もいますが、ポリとナイロンの性質を引き出すことができるので、僕は存在価値があると確信しています。
※これは余談ですが、「批判」=「人生の選択肢減少」です。発言には一貫性の法則が働くので、ハイブリットを試さず批判していると、ハイブリットを一生試せない人になりますよ。他のことでも一緒です。
基本的には、ナチュラルを張れない層でいうとポリとナイロンのそれぞれいいとこ取りをするためにハイブリットを張るので、ポリ×別のポリで張る人は見たことないです。
例えば、ガットには
▪︎横糸(クロス):打感を感じる
という法則があるので、メインをポリに、クロスをナイロンにすれば、「ポリの反発力で、ナイロンの柔らかさ」というおいしいとこどりをすることができます。
また、メインをナイロンに、クロスをポリにすれば、飛びはナイロンのものになり多少落ちますが、ガッチリした打感で、スピンもよりかかるようになります。
※クロスをポリにした方がナイロンの引っ掛かりが良くなって、スナップバック(ガットの動き)が強調されます。
縦をポリにすれば良く「飛ぶ」し、横をポリにすればより「引っかかる」というイメージです。
ハイブリットの特質を最後にまとめておきましょう。
●ハイブリットの強み
▪︎ポリとナイロンの性質のいいとこ取りができる
▪︎全ポリほど速いスイングスピードを要求されない
▪︎身体への負担はポリとナイロンの中間
▪︎全ポリがしんどい人でもポリの魅力を味わえる
▪︎クロスをナイロンにすれば打球感覚が向上し、プレーに「柔らかさ」が生まれる
●ハイブリットの弱み
▪︎2張り分のガットが最初から必要
▪︎全ポリほどのパワーは得られない
▪︎メインとクロスでテンション低下速度が低下するため、ラケットの歪み方が縦横で変わってくる(そんな気にしなくていい)
▪︎2本張りになるため、テンション維持が悪くなるとも(気にしすぎ)
●張り替え基準
▪︎頻度にもよるが、1〜2ヶ月以内では張り替えたい
素材や張り方、張り替え頻度に関する解説は以上になります。
ガットの「太さ」はどういう風に影響するの?
次に「ゲージ(太さ)」のお話をします。
ガットには必ず、1.20や1.25、1.35などの太さの違いがあり、実は太さの違いもあなたのプレーに大きな影響を及ぼします。
わかりやすく得失をまとめてみましょう。
●ガットが太いと(1.35>1.30>1.25>…)
▪︎太ければ太いほどガットは切れにくくなる
▪︎太いほどボールとの接触面積が大きくなり、打感が鈍く、ボールが飛ばなくなる
▪︎基本的には太めの方が安定
▪︎太すぎはボールを飛ばすのが大変
●ガットが細いと(1.15<1.20<1.24<1.25…)
▪︎細ければ細いほどガットが切れやすくなる
▪︎細いほどボールとの接触面積が小さくなり、小さすぎは不安定にもなる
▪︎打感はシャープで、パリッと、弾く感じになる
▪︎クリア、高反発
上記の通りです。
これらの特性を把握した上で、まずは標準的な「1.25mm」を試してみましょう。
その上で、「もっとパリッとシャープに弾きたいのか」、「ドスッと重たく打っていきたいのか」を判断すればOKです。
ガットのテンションはどうやって決めたらいい?
ガットのテンションも、素材や張り方、太さと並んで重要な道具の要素です。
同じラケットとガットでもテンションの高さによって全く打感が変わってきますから。
基本的には”あなたのラケット”と”あなた”の組み合わせで「ボールをどれくらい飛ばせるか」が重要で、ボールを飛ばせるならばテンションが高くてもいいですし、ボールを飛ばせないならば、あるいはもっと飛ばしたいならば、テンションを下げます。
基本的なテンションの違いによる得失は次の通り。
●テンションが高いと(60>59>58>…)
▪︎反発力がなくなる、飛ばなくなる
▪︎フラット系、あるいはパワーがありすぎてアウトしてしまう人におすすめ
▪︎スイングスピードが早ければテンションが高くても打感は柔らかく感じる
▪︎身体への負担は大きくなる
▪︎夏に合う
●テンションが低いと(35<36<…<45<46<…)
▪︎フェイスの小さい、飛ばないラケットでもボールを飛ばせる
▪︎フェイスの大きいラケットでもボールを飛ばせるので、スピンに回せるエネルギー量が増える
▪︎ラケットに対してテンションが落ちすぎると今後は逆に反発力がなくなってくる
▪︎一般的なイメージと違ってテンションを低く張っても問題はない
▪︎身体に優しい
▪︎冬でもボールが飛ぶ
厳密には「テンションが低い=ボールが飛ぶ」と言うことは科学的には証明されていなくて、単に人間が無意識的に打球角度を上方向にずらす分ボールが飛んでるように錯覚しているだけなようですが、とはいえ基本的には低テンションの方がボールが飛ぶという認識でOKです。
フェデラーも2014年からフェイス面積を90→97にあげましたが、この時ガットのテンションも「46くらい→56くらい」に変えています。
さらに、ジョコビッチやマレーは100インチのラケットを使っていますが、テンションは60近いです。
なので、使っているラケットのフェイス面積に合わせて、フェイス面積が大きいほど、同じ飛びを再現するにはテンションを高めると考えて間違いありません。
余談:近年低テンションも流行っている
これは余談ですが、近年ツアーを中心に「低テンション」が流行っています。
例えば、日本の錦織選手でずが、一時期「38ポンドくらい」と言われるほどテンションを下げていました。
🇯🇵錦織の張り「ニシコリ スタイル」‼ 最終戦で明かす3つの流儀‼https://t.co/aybRMehC2J pic.twitter.com/ZPXGdg3FTM
— tennis365.net テニス365 (@tennis365) November 14, 2018
※現在(2018年末)はメイン45、クロス43くらい
彼は95インチのラケットを使っているので、50ポンドより低くてもおかしくないですが、とはいえ随分とテンションが低いです。
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ガットもラケットと同じくらい奥が深い
今回の内容は以上になります。
冒頭で述べたとおり、「ラケット:50、ガット:50」でして、ラケットと選ぶのと同じくらいガットを選ぶことも重要です。
そして、ラケットはただフレームを決めれば終わりですが、ガットには張る人の影響や温湿度、気候、張ってからの時間、テンションなど多くの要素が影響する、いわば「ナマモノ」です。
「道具は何でもいい、上手い人は何を使っても一緒」という考え方は正論ですが、とはいえ全く同じ強さ、試合で拮抗した時の最後の差はメンタルだけではなく、道具の安心感にも影響を受けるものです。
極限の場面で自分の選んできた道具を信じるためにも、時間のある時には冷静に一度自分の使っているストリングを見直してみましょう。
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